- マルトリートメントって何?詳しく知りたい
- 自分が子どもにマルトリートメントしていないか気になる
- 子どもを傷つけるようなことはしたくない!どうすればいいの?
自分の何気ない一言で子どもを傷つけてしまったことはありませんか?
マルトリートメント(不適切な養育)は子どもの脳を物理的に変化させてしまいます。
この記事では、マルトリートメントの基礎知識から私の経験からの事例、そしてマルトリートメントをしてしまったらどうすればいいかまでまとめて解説します。
この記事を読めば、「親が子どもにしてはならないこと」がわかります。
マルトリートメントとは何か?
マルトリートメントとは何か?
マルトリートメントとは、子どもの心と体の健全な発達を阻む「不適切な養育」のことです。
虐待とマルトリートメントの違い
マルトリートメントは、虐待よりも広く捉えた概念です。
虐待とは言い切れないが、子どもの発達を阻害する不適切な養育全般を「マルトリートメント」と言います。
どんなことがマルトリートメントか?
あくまで一例ですが、以下のようなものが相当します。
身体的マルトリートメント
- たたく、蹴るなどの「暴行」
外傷が残る残らないは関係ありません。
性的マルトリートメント
- 性的な行為の強要や教唆
- 性器や性交を見せる など
子どもが嫌がっていれば、風呂上がりに裸で歩き回ることもマルトリートメントに入ります。
ネグレクト
ネグレクトとは、簡単に言うと「養育の放棄」を差します。
- 衣食の世話をしない
- 子どもを残しての長時間の外出
- 子どもの情緒的な欲求に答えない、無視
- 子どもが希望しているのにも関わらず学校に登校させない
- パチンコ等の娯楽に興じ、子どもを車内放置
- 病気やけがをしても病院に連れていかない など
心理的マルトリートメント
心理的マルトリートメントが、虐待に満たない不適切な養育が最も多くなります。
- 暴言や脅し
- きょうだいや友達との比較、差別
- 夫婦喧嘩を頻繁に見せ続ける
- 愚痴を継続的に聞かせ続ける
- 過干渉
- スマホの見せすぎ など
マルトリートメントで脳が傷つく
マルトリートメントを受けると、子どもの脳が物理的に変化してしまう(脳に傷がつく)ことがわかっています。
脳のどこが傷つくのか?どうなるのか?
身体的マルトリートメントによる影響
- 前頭前野が萎縮
- 前帯状回が萎縮
- 感覚野への神経回路が細くなる
■前頭前野の萎縮
前頭前野は、次のような役割を担っています。
- 感情や思考をコントロールし、行動を抑制
- 海馬(記憶)、扁桃体(情動の処理)をコントロール
そのため前頭前野が萎縮すると、本能的な欲求や衝動が抑制されにくくなってしまいます。
■前帯状回の萎縮
前帯状回は、
- 集中力
- 意思決定
- 共感
を司っています。
萎縮により、これらの機能がうまく働かなくなります。
■感覚野への神経回路が細くなる
例えば痛みに対して鈍感になります。
重度の虐待を受けた子どもが、腕をつねられても痛みを感じることがなかったという事例も報告されています。
心理的マルトリートメントによる影響
- 聴覚野の肥大
- 視覚野の萎縮
■聴覚野の肥大
脳は乳児期にシナプスが爆発的に増えます。
その後、神経伝達を効率化するため、不必要なシナプスの刈り込みがされます。
しかしこの時期に言葉の暴力を浴びると、正常な刈り込みが進みません。
ゆえにシナプスが伸び放題で聴覚野の容積が増えてしまいます。
こうなると、人の話を聴き取ったり、会話をする際に、余計な負荷が脳にかかかり困難をきたします。
それによって、心因性難聴になって情緒不安定になったり、人に関わることを恐れたりするようになってしまう場合があります。
■視覚野の萎縮
面前DVや夫婦げんかを見て育つと、視覚野が萎縮することがわかっています。
これにより以下のような症状が起こってきます。
- 視覚の記憶力が低くなる
- モノの細部をとらえる働きが弱くなる
これらの症状は、
- 苦痛を伴う記憶を脳内に留めておかない
- 苦痛を伴う記憶を繰り返し呼び起こさない
- 見たくない情景を見ないで済む
ようにするために、脳が適応した戦略なのです。
脳梁が傷つく
脳梁とは、右脳と左脳を繋げている部分です。
脳梁は性的マルトリートメントやネグレクト(スマホ育児)で傷つきます。
脳梁が傷つくことで左右の脳の情報伝達がうまくいかなくなります。
これにより、
- 理解や判断の機能(認知能力)が低下
- 集団行動が苦手になる
- 攻撃的になる
というような症状が起こってきます。
海馬が傷つく
海馬は記憶に関する部位で、ストレスに弱いという特徴を持っています。
マルトリートメントを受けると、コルチゾールというストレスホルモンが大量に分泌されます。
そうすることで、海馬の神経細胞が損傷し、学習能力や記憶力が低下する可能性が起こってきます。
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マルトリートメントを受けてきた私の事例
そんな私が、
- どんなマルトリートメントを受けてきたのか
- その結果どんな症状に苦しんできたのか
について実体験を紹介します。
どんなマルトリートメントを受けてきたのか
私が受けてきたマルトリートメントは
- 日常的に夫婦げんかを目撃したり、巻き込まれる
- 家族の心のケア役をせざるを得ない
の2点でした。
日常的な夫婦げんかの目撃、けんかに巻き込まれる
■夫婦げんかの目撃
一番古い記憶は小学生の頃です。
そのころの私は毎日いつどんな時に夫婦げんかが始まるか怖くてたまりませんでした。
2階の部屋でいつも神経を尖らせていたので、1階にいる両親の声色が変わるとすぐにわかりました。
やがて大声で両親の言い合いが始まると、恐怖で体がガチガチに固まっていました。
時には部屋にいられなくなり、近所の公園に行って時間がたつのを待つこともありました。
また私の目の前で夫婦げんかが起こることもありました。
私はとにかく親の機嫌をこれ以上損ねてはいけないと、とにかくじっとして耐えるしかありませんでした。
母が父を殴っていることもありました。
私はただ見ていることしかできませんでした。
■家庭内別居
高校時代、両親は家庭内別居状態でした。
母は家計のやりくりのため、父の食事だけは作っていました。
その食事を運ぶのは私か妹でした。
また両親の伝言係もやっていました。
家族の心のケア役をせざるを得なかった
我が家では母の力が特に強かったので、母の機嫌でその日の家庭の平和が左右されていました。
そんな母の心のケア役が私でした。
具体的には次のようなことを、小学生から絶縁するまでずっとやり続けてきました。
- 愚痴を聞き続ける
- 母がいかにかわいそうな人間かという話を聞き続ける
- 母の機嫌を取る
- 父の失敗をかぶり、母の怒りを鎮める
- 母ととにかく同調する
愚痴については、特に父のものがひどく、父がいかに家族を大切にしていないかを繰り返し聞かせら続けてきました。
私は父のことが好きな気持ちもありましたし、自分の体には父の血が半分入っています。
なので『自分の体に入っている血を否定される=自分を否定されている』と感じていました。
またとにかく私は自分が家庭の仲を取り持っていかなければならないと思っていました。
それには母と同調することが必要でした。
母の機嫌=家庭の平和
だったからです。
そして母と同調しすぎるあまり、私には「自分」というものがありませんでした。
そのためか思春期に反抗期がやって来ず、大人になってからやってきました。
かなり遅い反抗期を経験して、私はやっと「私は母とは違う人間なんだ」と『自分』という存在に目覚めることができました。
どんな症状に苦しんでいるか
私がマルトリートメントを受け続けたことで主に困っている症状は次の2つです。
- 人の話を聞きとることが苦手
- 記憶力が悪い
人の話を聞きとることが苦手
具体的には次のような症状です。
- 雑音があると人の話を聞き取れなくなる
- 聞き間違いが多い
- 一方、物音には敏感
私はとにかく雑音が苦手です。
人の声と同じ音量の雑音があると、会話することにかなりの苦労をします。
また聞き間違いが多く、少し活舌が悪かったり、声が小さかったりすると、言葉が聞き取れず、誤った返答をすることも時々あります。
一方物音には敏感で、人が気づかないような物音にも気づくことがあります。
おそらく家庭内の異変を察知することに役立っていたのでしょう。
記憶力が悪い
- 短期記憶が特に苦手
- 長期記憶も苦労した割にすぐに忘れる
私は短期記憶が特に弱く、なかなか苦労しています。
これは実際の知能テストで他の知的能力と比べて断然低い結果が出ました。
日常でよく不便を感じて困ることは、
- 暗算が超苦手
- 忘れ物が多い
- 人の顔が覚えられない
これらは実際に病院に行って脳の傷の有無を調べたわけではありませんが、明らかに人よりも苦手で苦労をしている症状です。
心理的マルトリートメントの特徴と完全に一致しています。
マルトリートメントをしないためにはどうすればいいか?
マルトリートメントがない家庭はありません。
しかし、マルトリートメントの強度と頻度が増したとき、子供の脳は確実に傷つきます。
私たち親にはどんな対応ができるのか解説していきます。
子育ての仕方を学ぼう
マルトリートメントをしてしまう親の中で多い原因の一つは「子育ての仕方を知らない」ことです。
子育てはとても大切なものにも関わらず学校では学ぶことができません。
そのため子育ては親から受け継いだ子育てが連鎖しやすいのです。
なので、「子育てを学ぶ」ということは非常に効果的なマルトリートメント対処法となります。
ここでは最低限つけておくべき子育ての知識をお伝えします。
マルトリートメントを学んで対応策を考えよう
すでにこの記事で学ばれたみなさんは、マルトリートメントを学ぶことはクリアしています。
あとは自分がしてしまっているマルトリートメントがあれば、具体的な対応方法を考えていきましょう!
例えば夫婦げんかやスマホの使い過ぎは、次のような方法は効果的だと言われています。
- 夫婦げんかになりそうなことはメールやラインで伝える
- スマホは時間を決めて使う
子育ての目標を学ぶ
このブログでは「本当に子どものためになる子育て」を解説しています。
主にアドラー心理学を基にしています。
子育てのねっこは「子育ての目標」に向かって子育てすること!
「子育ての目標」に向かう対応をしていけば、まずマルトリートメントは起こりません。
【行動面の目標】
- 自立する
- 社会と調和して生きる
【行動面を支える心理面の目標】
- 子どもが「私には能力がある」という信念をもつ
- 子どもが「人々は私の仲間だ」という信念をもつ
子育ての目標に向かうための具体的方法も解説していますので、以下のリンクからぜひ学んでみてください。
感情をコントロールしよう
アンガーマネジメントという言葉を聞いたことありますが?
たくさんの書籍やセミナーがありますが、言葉通り「怒りをマネジメントする」という意味です。
アドラー心理学では、感情は目的があって使っているものだと考えます。
例えば、あなたは自分の上司にイライラしたら怒りますか?
きっと怒りませんよね?
それは怒りをコントロールしているということです。
つまり、感情はコントロールできるのです。
子育てについての怒りをコントロールするのにおすすめの方法を2つ紹介します。
- 発達の知識を得ること
- アンガーマネジメントを学ぶこと
子育てでイライラする原因の大きな理由の一つは「子どものことがわからない」というものです。
しかしその点についての答えはシンプルです。
「発達の知識」をつければいいのです。
子どもの成長を見守るうえで最低限知っておいた方がいい知識を次の記事で解説しています。
もしそれだけでは難しいようならアンガーマネジメントを学ぶことをおすすめします。
アンガーマネジメントについては、次の動画と本がおすすめです。
自分の人生を充実させよう
人生が豊かになる子育ての土台は、「自分の人生の幸せ」です。
これは毒親の元で育って確信していることです。
ここでは
- アドラー心理学をはじめとする心理学
- 成功者と呼ばれる人たち
を基に、現在幸せに生きていると実感している私くまこが実際に行っている方法を解説します。
自分の人生に責任を持つ
自分の人生を幸せにできるのは自分だけと覚悟をしましょう。
- 誰かに幸せにしてもらいたい
- ○○のせいで私は不幸だ
という思考は残念ながら、人に依存をする自立していない考え方です。
しかし逆に「自分の人生に責任を持つ」と決めた瞬間、人生の主導権は自分となります。
私の場合は次のような変化が訪れました。
- 自分のやりたいことができるようになった
- 人の目が前より気にならなくなった
- 人との関係が良好になった
- 嫌なことを無理してやらなくなった
- 精神的に自立ができ、自信を持てるようになった
- 心に少し余裕ができた
「自分の人生に責任を持つ」ことは、人生をより豊かにする第一歩です。
複数のコミュニティを持つ
コミュニティが家族だけだと、家族の仲で何かあったときに逃げ道がなく、苦しくなってしまいます。
研究でも複数コミュニティを持つ人の方が精神的に健康とわかっています。
友達、趣味、習い事、オンラインサロン、SNS…なんでも構いません。
自分にとって居心地のよいコミュニティに複数参加しましょう!
自分の価値観を見つめる
自分の価値観と向き合うことで、
- 自分がどんな人生を生きたいのか
- 自分がどんなことに幸せを感じるのか
がわかるようになります。
自分の価値観と向き合うおすすめの方法は『価値観マップ』を作って可視化することです。
価値観マップの作り方については、次の動画と記事がおすすめです。
考える力 円満な人間関係 マインドマップ価値観 【自由な人生】への第一歩は「人生の羅針盤」を作ること!価値観マップの作り方
マルトリートメントをしてしまったらどうしたらいいか?2つの対応法
仮にマルトリートメントによって脳に傷がついてしまっても、今の研究では「脳の傷は回復する」ということがわかっています。
諦めず対応していきましょう!
ここでは2つの対応法を解説します。
「愛着の絆」を結び直そう
傷ついた脳に必要なものは「愛着」です。
子どもの健やかな発達には親子の愛着の絆が欠かせません。
傷の回復には愛着の絆を結び直す必要があります。
ここでは愛着の絆を結び直す4つの効果的な方法を解説します。
1.目を合わせる機会を増やす
目を合わせることは対人関係の第一歩です。
愛着に問題がある子は、目を見ないことが多いと言われています。
目を合わせる練習をし、「目を合わせても怖くない」と教えることが重要です。
こうすることにより、ミラーニューロンという脳神経の発達が促されます。
2.スキンシップ
ハグなどのスキンシップは脳にとって様々な良い影響をもたらします。
- 緊張ホルモンの分泌が抑えられる
- セロトニン(良い気持ちにさせる脳内物質)の分泌を促す
- オキシトシン(幸福感をもたらす脳内物質)の分泌を促す
- 発育ホルモンを分泌させる
しかし、スキンシップには注意すべき点があります。
- 子どもが嫌がるならやめること
- 触ってもいいか子どもに聞くこと
- 水着で隠す場所は触らない
嫌がっている子どもに触っても逆効果です。
特に思春期の子どもは触られることが嫌に感じても自然なことでしょう。
0歳の赤ちゃんであっても、触られるのを嫌がることはあります。
子どもの意思や感覚を尊重しながらスキンシップすることが大切です。
3.子どもと一緒に遊ぶ
マルトリートメントで傷ついている子どもと遊ぶのに効果的な遊びの選び方は以下の通りです。
- 競争のない遊び
- 身体を動かす遊び
- 想像力を使った遊び
- リズム遊び
これらの遊びは、マルトリートメントによって停止して脳機能を回復させてくれます。
子どもとの遊び方がわからなければ、ネットで検索すれば、たくさんの遊び方が出てきます。
上記の4つを基準にして遊びを選んでみてください。
4.子育ての目標に向かった子育てをする
子育ての目標に向かった子育ても効果的です。
【行動面の目標】
- 自立する
- 社会と調和して生きる
【行動面を支える心理面の目標】
- 子どもが「私には能力がある」という信念をもつ
- 子どもが「人々は私の仲間だ」という信念をもつ
この目標に向かう具体的な方法がいくつかありますが、その中でも特に愛着の絆を結ぶのに効果的な方法が次の3つです。
- 子どものよいところを見つけ、勇気づける
- 子どもの困った行動には叱るのでなく、解決方法を一緒に話し合う
- 家庭内のルールは家族全員で話し合って決める
これらは子育ての4つのRを育ててくれます。
- Respect (尊敬)
- Responsibility (責任)
- Resoucefulness(頭を使って今ある資源を使える)
- Reciprocity(相互性)
外部に助けを求める
マルトリートメントをしてしまったときの対処法の二つ目は、「外部に助けを求める」です。
医療機関、市町村の相談所、教育機関などに助けを求めることも大切なことです。
家庭、学校、医療機関、心理の専門家などがチームになって取り組むことで、一人で悩むよりも問題は解決しやすくなります。
もしも子どもの精神状態がかなり不安定であれば、心理療法や薬物療法も必要になる可能性があります。
その場合は家庭だけでは対応できませんよね。
相談することは何の恥ずかしいことでもありません。
困っていたらぜひ外部へ相談してみてください。
まとめ:マルトリートメントとその対応法を知ろう
マルトリートメントとは、子どもの心と体の健全な発達を阻む「不適切な養育」を差します。
- 前頭葉の萎縮(本能的な欲求や衝動が抑制されにくくなる)
- 前帯状回の萎縮(集中力、意思決定、共感力の低下)
- 感覚野への神経回路が細くなる(感覚を感じにくくなる)
- 聴覚野の肥大(会話の際に脳に余計な負荷がかかる)
- 視覚野の萎縮(視覚的記憶、細部を捉える力の低下)
- 海馬の萎縮(学習能力や記憶力の低下)
- 脳梁の萎縮(認知能力の低下、集団行動が苦手)
以上のようにマルトリートメントには、脳を傷つけ、子どもの心を傷つけてしまいます。
マルトリートメントがない家庭はありません。
だからこそマルトリートメントをしないために学ぶ必要があります。
- 子育ての仕方を学ぶ
- 自分の人生を充実させる
- 自分の感情をコントロールする
これらは知っていて当たり前のように扱われるかもしれません。
しかし本当に知っていますか?
こんなに大切なことなのに学校では教えてくれませんよね。
だから学ぶ必要があるのです。
- 『愛着の絆』を結び直す
- 外部に助けを求める
脳の傷は治ると今の研究ではわかっています。
外部の助けも借りることは何の恥ずかしいことでもありません。
愛着の絆をしっかりと結び直し、脳の傷を回復させていきましょう!